オーストラリアで薬剤師になるための最後の難関、Oral Exam

これはオーストラリアの大学を出た人も、海外からの薬剤師の資格を切り替える人も、全員同じです。
この試験は、インターンシップが最終段階に差し掛かったころに受けることができます。
オーストラリアで日本の薬剤師免許を切り替えるには、大まかに
①OET(医療従事者用の英語試験)、KAPS(AUSの薬学部卒業と同等だと証明するための学科試験)
②インターンシップ(フルタイム、1年間)
③Written Exam、Oral Exam(インターンシップ中)←海外薬剤師、現地学生ともに同じ試験です。
という順序で試験を受けていきます。
(その他、書類提出も多いですが、そこは省きます。)
OETについてはこちら
KAPSについてはこちら
をご覧ください。
ここで注意しておきたいのは、
こちらオーストラリアでは、多くの欧米諸国と同様に薬剤師に『国家試験』がありません!
オーストラリアでは、オーストラリア薬剤師免許を取得すれば基本どの州でも働くことができます。
ですが、州ごとに多少、薬事法が異なります。なのでWritten&Oral Examに関しては、試験の形式は似ていても、実際の問題はどの州で薬剤師になるかによって異なります。
国全体で統一の『国家試験』が存在しないのです。
こうして考えると、日本って本当に(国の面積でみると)小さいんですよね~
何でも「統一」できちゃう。
Written Examは3時間のコンピューターベースの試験で、
主にオーストラリアの薬事法関係、計算、薬学的な分野から出題されます。
薬学的と言っても、用法用量や禁忌、相互作用、そして最もふさわしい薬を選ばせるようなケーススタディー等、ほとんどクリニカルな知識が問われます。
そして今回は気になる人も多いであろう、最後のOral Examについて書こうと思います

Oral Examは一人ずつ個室に呼ばれて、試験官2人と行います。
メルボルンはビクトリア州。
ビクトリア州では、1人約1時間にわたり、このOral Examが行われます。
内容はPart1~4までの4部制。
Part1 : 薬の基本的知識
5つの薬の名前が書かれた一枚の紙が渡され、
試験官:『これらについて、知っていることを述べてください。』
受験者:(薬の分類、適応症、基本的な用法用量と最大量、副作用、カウンセリングポイント等を時間以内に答えていきます。)
実際に私が渡された薬リストはこちら↓
- Paroxetine
- Clopidgrel
- Furosemide
- Donepezil
- Amphotericin B
その薬について自分が知っていることをどんどん言っていきます。
時間以内いっぱい使って、になるべく多くのことを言うのがポイントです。
Part2 : OTC
試験官が患者役。薬局に来店した設定で、薬剤師として質問していき、その患者さんの抱えている問題、症状からOTCを一つ選び、カウンセリングをしていきます。
患者さんはこちらが質問しない限り症状やバックグラウンドの説明をしてくれないので、コミュニケーション力が試されます。
このOTCは、簡単なようで結構厄介。
薬局の設定なので、どんな症状で来るかわかりません。「風邪薬」や「しっしん」などのシンプルなものが実際に出題された例があるかどうかはわかりませんが、「痔」や「水疱瘡」、「髪の毛のシラミ」や「いぼ」、「抜け毛」なんかも薬局では考えられるテーマです。
私が実際にもらった問題は、『鉄剤を買いに来た女性』の設定でした。(正直、予想外のトピックだけにそれっ❓って感じでした
)
)ここでは商品を勧めることも重要ですが、その前にRed Flagsを見落とさないように細かく質問していく必要があります。
例えば「鉄剤を購入しようとしている理由を教えていただけませんか?」から始まり、
「血液検査をしましたか?」とか
「いつもどんな食事を摂っていますか?」とか
「最近変わったことは何かありませんか?」とか
「便の色は?」「生理は?」とか。
内部出血していないか、月経過多の可能性がないか、などのRed Flagsは見落としてはいけません。
多国籍のお国柄なので、宗教的や文化的理由でお肉を食べてない人も鉄欠乏になりやすいです。
鉄剤を一つお勧めし(ブランド名も言います)、服用方法や副作用などを含めたカウンセリングまで全て10分以内におこなわなければなりません。食事に問題がある場合は、食事のアドバイスも加えます。その間に、もう一人の試験官からも色々質問が飛んできます。
「どうしてこの質問をしたんですか?」「どうしてこの商品を選んだんですか?」「この商品に入っている鉄剤の量は?」「もしおススメしない場合があるとしたら、どんな場合ですか?」等々。
OTCでは薬以外に、改善できる方法までカウンセリングに含めることがポイントです。
Part3 : 薬事法
ここでは『薬事法的にグレーゾーン』なシナリオを渡されます。
シナリオを読んだら、「自分だったらどういう行動を取るか?」という意見を時間いっぱい使って述べます。
この問題も幅広いので、例を出しにくいのですが、
例えば「末期がんの患者さんの○○(モルヒネ系の薬)が切れてしまい、処方箋が手元にもうありません。今日は土曜日の午後で、主治医には月曜日にしかコンタクトが取れません。痛みで苦しむ患者さんを見ていられない家族が涙ながらに相談に来ました。この場合、どうしますか?」
考える時間が非常に少ないので、パッと判断することが必要です。
大切なのは、「法律をきちんと理解しているか」ということ、そして与えられた環境で一番ベストな方法は何か?という「判断」をし、それを順序よく組み立て、自分の言葉で述べなければなりません。
Part4 : 問題解決
ここではロールプレイ。OTCとは異なり、患者さんが処方箋を持ってくる設定なのですが、「何か」間違っているんです。
その間違いを探すという問題です。
もちろん、渡された処方箋を見ただけでは、一体何が問題なのかはわかりません。
とにかく質問をして、患者さんのバックグラウンド、病歴、アレルギー、妊娠の有無、併用薬など考えられることを全て聞いていきます。
もしかしたら処方された薬がその患者さんにとって禁忌かもしれないし、
他に併用している薬と相互作用があるかもしれません。
ここは試験官の口がかなり固く、質問した事しか答えてくれません。
問題を発見したらそれで終わりではなく、ドクターに電話をして薬を変えてもらったりと何かしら対処しなければなりません。
この電話も、もちろんロールプレイです。(受験者はもちろん真剣ですが、今思えば、一方の試験官も患者役に、ドクター役に、患者の家族役に・・・と大忙しだったなぁと思います。)
ここで時間以内にもし問題が発見できなかったり、適切な対応を取れなかった場合は、Part 1~3までパーフェクトでも、残念ながら落とされます
それだけウェイトの高い問題です。
それだけウェイトの高い問題です。いかがでしたか?
この記事を読んで、少し具体的にOral Examがどんな感じかなのかを感じていただけると嬉しいです。
現在は、現地の薬学生・海外からの薬剤師さんがOral Examに合格できるように、チューター(家庭教師的なものです)としてもサポートさせて頂いています。(もちろん日本でも、オーストラリアに来てからも、勉強してきた期間は誰よりも長いですので。笑)
あの時の緊張感はまだ覚えていますよ~

なので皆さんの気持ちや不安ももちろんわかるんです~

日本の国家試験のように、丸暗記とマークシート形式の試験とはちょっと違いますが
私はこのオーストラリアのOral Examに関して、技術だけを見られるOSCEとは違い、問題もプラクティカルで良くできているなぁ~と思っています
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