オーストラリアで薬剤師

オーストラリア薬剤師の日常&ローフォドマップライフについて綴っています♪ 

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法律関係

日本と違うのでとても理解しにくいオーストラリアの医療制度。
今回は医療費について書いてみます

医療費削減のために、日本同様、オーストラリア政府はジェネリック医薬品を勧めています。
私の印象ですが、日本人を含むアジア系、そしてインド系の人は先発品(オリジナルブランド、いわゆる高いもの)を選ぶ傾向があります。正直な話、有効成分は全く一緒でも、確かに添加物などの微妙な違いはありますので、効果が全く同じとは個人的には思いません。
てんかんや精神系の薬で安定している方が、急にブランドを変えると不安というケースはもちろんあるので、その場合はすでに使用しているブランドを勧めることがあります。でもそれ以外の痛み止めなどの薬はジェネリックでも構わないと思います。価格も安いです。私は自分の薬は自分で調剤しますが、安いジェネリックを選びます。
ジェネリックの方が色々改良されている場合もあります。でも、選択は人それぞれです


日本では医者にかかる時も、薬局で処方箋医薬品を買う時も、全体の価格の3割のみ支払います。(3割負担の場合)

かなり簡単にすると
(薬代+調剤費もろもろ)×0.3=支払う金額

なので、薬は安いものだと当然のように思いがち3割負担なので、ジェネリックでも先発品でも、払う金額には大して差が無いように思うこともあります。
薬局で3000円も払うことがあれば、「すごく高い」と思ってしまうぐらいでもそれは日本の医療システムならではのことなんです

オーストラリアではメディケア(国民保険みたいなもの)を持っている人は、一定の価格以上の医薬品は政府がカバーしてくれます。
一般の人はGeneral Patient、低収入家庭や年金暮らしの方はConcessionというカテゴリーに分けられます。General Patientの場合は、2019年は患者が払う医薬品の最高額が$40.30です。Concessionカードを所持している場合は、$6.50です。

例えばこのSeretideという薬。
喘息の予防薬、ステロイド&β刺激薬の混合吸入薬です。(※英語では予防薬はpreventerと言います。)
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日本では薬の価格+調剤費用などなど含めた料金の3割を支払います。
このSeretide、薬の価格自体が$60を超えるほど高い薬です‌ 

メディケアを持っていない人(旅行者や留学生など)は実費になります。
メディケアありのGeneral Patientは、$40.30支払います。(患者が支払う最高額が$40.30なので、それ以上の分は政府がカバーしてくれます。)
Concessionの方は$6.30支払います。

$60以上もする薬が、Concessionの人はたったの$6.30!
一方、それ以外のGeneral Patientは吸入薬に毎月40ドル以上も支払わなければならないとなると、患者さんの負担は大きく違ってきます。

逆に、薬の価格が支払い最高額よりも安い場合(仮に薬代が$20ドル、調剤費が7ドルとします。)
General Patient・・・薬代+調剤費の総額=$27。これは最高支払額の$40.30よりも安いので、全額支払うことになります。(患者さんは薬局で$27払います。)

Concession Patient・・・薬代+調剤費の総額=$27。これは最高支払額の$6.50よりも高いので、それ以上の料金($27-$6.50=$20.50)は政府がカバーしてくれます。ですので、患者さんがお財布から薬局に出すのは$6.50ということになります。

さらに加えると、以上は保険でカバされる薬の場合です。ちなみに抗インフルエンザ薬のタミフルは保険で元々カバーされません。その場合、General patient でもConcessionでも全額負担で$60ほどの出費になります

オーストラリアではジェネリックを選ばずに先発品を選ぶと、Brand Premiumという価格が上乗せされてしまいます。 以前に書いたBrand Premiumの記事はこちら

Brand Premiumが$3の先発品だとすると、General Patientの場合、最高支払額+Brand Premium=$43.30支払うことになります。 Concessionの場合は最高支払額+Brand Premium=$9.50支払うことになります。
もともと高額支払わなければならないGeneral Patientの場合は「たったの3ドル」になるか、「もともと高いのにさらに3ドル払わないといけないの?」になるか、思うことは人それぞれです。(私は後者です。)ジェネリックにすると薬の価格が半額かそれ以下になる薬も多いので、結果いつも支払い額が30-40ドルだったのが、ジェネリックにすることで10-20ドルくらいになったりします。薬の価格がダイレクトに支払額に影響します。

でもConcessionの場合は、Brand Premiumの薬を選ぶと「いつも$6.50なのに$9以上も払うの?高すぎる!」ということになります。

こういう仕組みなので、オーストラリアではジェネリックにすることで出費をかなり抑えることができます。保険の仕組みが違うと、薬の出費に対する考え方もずいぶん違ってきます。

日本にいた時はあまり薬代について考えたことがありませんでしたが、オーストラリアに来てからは薬代が非常に高価に思ってしまいました薬の価格は日本と変わらないと思うのですが、保険の仕組みが異なるのでそう思ってしまうのでした。




オーストラリアの処方箋は日本と大きく違うので初めはどういう仕組みなのかわかりませんでした。

クリニックに行くと、このような処方箋をもらいます↓(病院処方箋はまた少し違いますが)

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右と左、同じことが書かれていて、真ん中に切り取り線がついています。

薬剤師に処方箋を出す時はこの状態で出し、調剤後に薬剤師が切り離します。右はmedicare copyと呼ばれ、メディケアという『政府の保険機関に提出する用』、左はduplicate と呼ばれており『薬局側のコピー』として保管します。

分かりづらいですよねたまーに知らなくて、勝手に破り片方だけしか持ってこない患者さんがいるのですが、それでは処方箋として認めてもらえないため、調剤できません

さて、この処方箋はヒドロコルチゾンという弱ステロイドのクリーム。湿疹なんかによく処方されます。Qty 50gは 量が50g、No repeatsはリピートは無しという意味。

リピートって何?となるのですが、これが面白いシステムなんです。処方箋にRpt 5 やRpt 2と書かれていることがあります。これは、『あと〇回(数字の回数だけ)この処方内容で薬を買うことができますよ』という、医師からの指示です。Rpt 5なら、この処方箋で後5回分もらえますよ、という意味です。

これができるのは、オーストラリアの処方箋の有効期限が1年もあるからなのですちなみに日本は処方日から4日以内でなければその処方箋は無効です。

ちなみに、依存性のあるS8に属している薬の場合は6ヶ月間有効です。有効期限が切れてしまったら、まだリピートがあったとしてもその処方箋をつかうことはできなくなり、再びドクターかかって処方箋をもらわなければなりません。

このリピート処方箋、とてもややこしいのですが、患者さんにとっては毎回/毎月処方箋をもらうためにドクターに行かなくても良いのでありがたいシステム。

でも患者さんの状態を頻繁にチェックできないため、状態が変化した場合途中でモニターできないのも事実です。

日本は医療費はかかりますが、毎月ドクターに診てもらい、薬や量の変更などモニタリングしやすい環境にあります。

オーストラリアは患者さんの負担は少なくなりますが、副作用や効果のモニタリングがしにくいのが難点だと思います。

ちなみに、リピートがある場合は、
調剤後、左のduplicateの上に、黄色のリピート処方箋が一緒にホチキスでとめたものが患者さんに返却されます。

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患者さんが次に薬が欲しい時には、その2枚重なった処方箋を薬局に持って行く必要があるため、お家で大切に保管しておかなければなりません。

どちらかがなくなってしまった場合も、リピート処方箋として無効となってしまうので注意が必要です。

忘れやすい人は、かかりつけ薬局にリピート処方箋を保管してもらうこともできます。

かなり久しぶりに一時帰国しましたー仕事が忙しすぎて、2年以上休みを取っていなかったので、今回は両親に会うのも本当に久しぶりです。

帰国早々、今回の帰国の大イベントの一つ、PET/CTを受けてきましたPET/CTはがんを診るための検査。普通の画像診断では映らない、まだ小さい癌まで発見できます

今回は‌大阪にある有名なPET画像診断センター 森ノ宮クリニックで受けました。画像診断は機械だけじゃなく、画像を細かく読み取ることができる専門医がいるところを選択することが大切、だと私は思っています。

日本人の2人に1人は「がん」という事実信じられないかも知れませんが、他人事ではありません知り合いや家族ががんになって初めて自分も調べなきゃ!と思う人がほとんどではないでしょうか。

私は学生時代に祖父をがんで亡くし、闘病生活、介護、最期の在宅療法まで全てを見てきました。そして祖母が重度アルツハイマーというダブル介護。

そして2年前、風邪も引かないような健康な親戚のおばが胃癌になり、発見された時はステージ4。昨年末に未成年の子供達を残して他界。

同い年のアメリカ出身の友人も、健康体で検査や病院とは無縁の人生だったのに、急な痛みで救急搬送、子供が生まれたばかりなのに末期という辛い宣告...

本当に他人事ではないんですよね。
本人も辛いですし、家族も本当に辛い。家族の人生をガラリと変えてしまいます。
わたしの周りで経験している人は、驚くことに健康に自信があった人が多いんです。だから発見が遅れてしまいました。
私は、周りの家族を悲しませたくない....なので日本に帰ったら絶対検査することにしていました。

私は大学卒業後、一時期がんの研究に携わっていおり、『早期発見』の大切さ、それより前の『予防医学』の大切さを実感しました。予防できれば理想‌予防できなくても早期発見できれば、選択肢も多く対処できるだから検査って大事なのです。

PET(Positron Emission Tomography)検査とは、「陽電子放射断層撮影装置」を用いた検査のことで、腫瘍組織や心臓・脳などの働きを断層画像としてとらえる検査方法です。

この検査ではポジトロン(陽電子)を放出する薬剤を静脈から注射し、がんに集積した微量の放射線を測定します。

最近では、このPET装置と16列マルチスライスCTを組み合わせたPET/CTが主流で、がんの広がりや転移・再発の状況を的確に画像化できるようになりましたなのでPET/CTと言います。
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PET/CT検査は、検査の前に陽電子を放出する元素を組み込んだ薬剤(FDG)を注射します。すると薬剤が腫瘍に集まり、そこから出る微量の放射線をPET機器が検知することにより悪性腫瘍を発見します。画像では、ピカーっと光ります。
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どうして薬剤が腫瘍に行くかというと、薬剤にブドウ糖が入っているためなんですがん細胞は活発な分裂をするため、エネルギー源として正常な細胞の3~8倍のブドウ糖を消費しますから、ガン細胞に選択的に集まるという仕組みです。(糖質摂りすぎが体によくない理由もこれで説明がつきます。)

PET/CTの特徴は
それまでの検査ではわからなかったがんや転移の部位を発見できる
たったの20分ほどで頭から大腿まで全身を一度に検査できる
痛みや不快感が注射くらいでその他ほとんどない
です。

PET/CT検査は、空腹の状態で行います。薬剤を注射した後約1時間横になり、薬剤が身体中に回るまで待ちます。そして検査開始。機械の台の上に寝てるだけなので何もしません。結果はある程度その場で分かるのですが、専門のドクターに画像を診てもらい、約1週間できちんとした結果が出るそうです。

PET/CT検査に使用する薬剤は、炎症などがん以外の病気の場所にも集積するので、パーフェクトではありませんが、かなり細かいところまで診ることができる検査です。

ここで、日本とオーストラリアの医療制度を比べてみたいと思います

オーストラリアはGeneral Practitioner (GP)という主治医制度をとっています。何があってもまずかかるのはGP。GPの判断で専門医が必要だとなれば、紹介状が出されます。紹介状をもらったら、後は自分で施設に電話をかけて予約を取ります。紹介状がないとダメだし、その予約がなかなか取れないことも多いので待ち時間が多いのも難点その後、結果を聞くために再度GPに予約を取ります。行ったり来たりの長―い道のりですPET/CTだけではなく、血液検査や超音波検査なども同じです。紹介された専門医が合わないと思えば、セカンドオピニオンとして別のドクターに意見を求めることもできますが、日本と比べて自分で医療を選ぶ自由は少ないという印象です。癌が疑われているのに、予約を取ろうとしたら検査が3か月後…なんてことになったらその間気が気じゃありません。

オーストラリアでPET/CTは、痛みや何かしら癌の疑いがある場合に使います。なのでGPからの紹介状が必須です。予防医学という視点があまりないのです。日本では癌が疑われれば、多くの場合健康保険が適用されます。3割負担で3万円程度の自己負担。オーストラリアでの自己負担は、がんの種類にもより様々です。

日本の良いところは、実費検診ができることこれってすごいなぁーと思います。10万円ほどで全身を調べることができます。

しかも、早い。

全てにおいてスピーディー。

受付の方をはじめ検査技師さんの丁寧な説明と対応に、しみじみと感じた日本のホスピタリティーの凄さ!あんなに深くお辞儀をされると、慣れていない私は申し訳なく思ってしまうほどです

海外からお客さんが検査を受けるために来日するという「メディカルツーリズム」が一時期流行したのも納得できます。

「予防医学」って非常に大事な考え方で、事が起こる前にするもの。何かあってからでは遅いんですよね


ブログを書きながらも結果にドキドキですが、今回受けることができて良かったです。


追記

決して、オーストラリアの医療を悲観しているわけではありません。

オーストラリアは移民の国。世界各国から来た腕のいいドクターも沢山います。様々な患者を診ているからこそ、視点が違うし経験値も多い。

移住してから、日本ではわからなかった(診断されるまでに至らなかった?)私の卵巣の病気、そしてIBSが発覚して最新の栄養学を学ぶ機会を与えてくれたのも、アレルギー治療に挑戦できたのもオーストラリアに来てからです。

 

ただ、早期発見や治療スピードとなると、日本の医療システムのほうが勝っていると思います。オーストラリアでは自分が気を付けてあげないと、気づくタイミングを逃してしまう危険性が大きいと思います。


以上、PET/CT検査を通して見た医療制度の違いでした。

 

薬を調剤する事を英語で(動詞) diapenseと言います。

処方箋を受け取り、コンピュータにデータを入力すると、用法用量が書かれたラベルが印刷されます。

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黄色の矢印・・・薬の商品名と薬剤名。Noxicidという商品名で、薬はエソメプラゾール。下に用法用量が記載されています。(一日一カプセル)

紫色の矢印・・・値段

緑色の矢印・・・薬局の名前、住所、連絡先

ピンクで消した部分・・・患者さんの名前

ブルーで消した部分・・・処方したドクターの名前

そのラベルを、薬の箱またはボトルに直接貼ります。※白く囲った部分は処方箋に貼ります。
こんな感じです。

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こちらでは薬袋(薬が入っている紙袋で、表に名前と用法用量がかかれているも) はありません。

その際、特に注意が必要な薬には特別なラベルを貼ります。※上の写真、緑矢印部分


例えば、

向精神薬には『 眠気を及ぼす可能性があるため、車や機械の運転は避けること』が書かれた赤いラベル(label 1)
睡眠導入薬には、上記のlabel1の内容に追加で「眠気を及ぼすための薬」であることが書かれている 赤いラベル(label 1a) 
メトロニダゾール(抗生物質)など、アルコールの作用を強めてしまい、酒さ作用のある薬にはアルコールを避けることが書かれているピンクラベル(label 2) 
グレープフルーツと相互作用のある薬には その事が書かれている黄緑色ラベル(label 18)

を貼ります。

その他にも沢山種類があります。薬ごとにどのラベルを貼るか決められており、中でもlabel1とlabel 1aは貼る義務があります。眠気が起こると重大な事故に繋がってしまう可能性があるためです。

上の写真は咳止めシロップのコデイン。
眠気を及ぼすのでlabel 1を貼らなければなりません。

その他のラベルは、貼ったほうがもちろん良いですが、患者さんが同じ薬を長期間服用しており、きちんと理解している場合などは省く場合もあります。

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SSRIのシタロプラムはCITALOPRAM(サイターロプラム)と発音します。ラベルがカラフルで注意を引きやすいですね。

左から

Label 12 めまいを引き起こす可能性があるので注意、label 5 市販薬や他の薬を飲む際は薬剤師に相談をしてください、label 9 急に服用をやめないでください

という事が書かれています。

2年に1度、厚生労働省に提出が義務づけられている届け出。
これをしないと免許剥奪...みたいな事にはなりませんが、きちんと届け出ないといけません
オーストラリアに来てから完全に忘れていた私‌ 法規の授業でも国試の時も何度も勉強したのに、頭から完全に抜けていました。

今回はたまたま、別の用事で厚生労働省のホームページを見ていて気づいたという奇跡‌ 日本にいる母に頼んで代理で提出してもらいました

薬剤師会に所属していたり、医療機関で働いていれば通知が来るそうですが、私のように所属していなければ通知も何もなしです。海外にお住まいの方は特に、運転免許証がパスポートの更新も気づいたら期限切れていた...なんてことも。

今後は気をつけないと‌と学びました。

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