オーストラリアで薬剤師

オーストラリアでの日常、薬剤師キャリア&子育てについて綴っています♪ 

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ドラッグ


ここ最近、極寒のメルボルンからこんにちは

最近、お家でエスプレッソを淹れて飲むのが幸せな時間ですIMG_20210704_150902


こちらは、有名なコーヒーロースター St Aliさんのコーヒー豆写真はdecaf(カフェインなし)の豆です~

淹れたてのエスプレッソに、パンプキンピューレとシナモンを加えて・・・

パンプキンラテを作りましたIMG_20210704_204540

今朝はこれを飲んでから仕事へ

今日も忙しかったのか、
患者さんから色んなお話聞けて、没頭してしまったのか??は謎ですが


あっという間に時間が過ぎてしまって・・・


最近思う事は、ドラッグ中毒から復帰しようと頑張っている患者さんが、私に心開いて色々と話してくれるようになったことが嬉しいです。

レギュラーの患者さんだから、もう【この人=○○と××を飲んでて、テイクアウェイが◎日分必要】
っていうのが、頭に自然に出てくるようになりました。
あと思うのは、患者さんの名前を覚えるとやっぱり何事もスムーズです。

それで心を開くきっかけになるのは間違いないと思う。

そして、あとは色んなテクニックを使ってラポートを築く・・・となると思うのですが、それも自然にできるようになってきたような気がします。(このテクニックは、知っていると本当に役立ちます


確かに色々な患者さんがいるけど、良い人もいっぱいいます。

私の知らないニュースや政治のことを毎週教えてくれる人、

正直に色々話してくれる人、

面白いです。

きっと、オーストラリアで薬剤師をしていなかったら、
そして今こうやって仕事をしていなければ
知らずに終わったであろう、新しい世界を見ている気がします。

毎週、どんどんメサドンの量を減らしていって頑張っているある患者さん。
あとちょっとだね、なんて話していたら、
次の時に合ったら、何だかソワソワして、手も震えていました。

やっぱりちょっと減らすの早すぎたかなぁ?
でもあと一週間この量で頑張る、みたいな話をしたり。


薬がどうやって効くかは理論で分かっていても、やっぱり実際に体験したわけじゃないから、未知の世界だなぁと思います。

きっと処方してるドクターも同じだと思います。

メサドンは甘ーい香りがするのですが、患者さんによると、味は超まずいらしいです。

しかも、その日によって味が違って感じるのだそう。
あと、ドラッグって高用量から徐々に減らしていくのは割とラクみたいなのですが、あと何ml、かなりの少量からさらにそれをゼロにしていく過程が一番きついんですって。

やっぱり人生、決して楽じゃない。
そして人間だもの。誰でも心が弱くなる時はあるでしょう。たまたま、そんな時に出会ったのが薬だったというだけ。その他にDVやいじめなどに走る人だっています。

自分がどうしてドラッグに手を出してしまったのか、そのストーリーを話してくれる人もいます。

ドラッグ中毒だった過去は、過去。
私だって、過去や噂話だけで、本当の自分を見ずに判断されてしまったら嫌です。
それと同じで、ドラッグ中毒だったからということだけで人を判断してはいけないな、と改めて思いました。


大麻はレクリエーション用(違法)と医療用に分けられますが、これって正に『薬は使い方次第でQOLを向上させるけど、逆に健康被害へと導く可能性もある』ということを良く表していると思います。

食べ物でもサプリメントでもそうですよね。
食べ物だから安全とか、自然のものだから安心っていうことは、全くありません
これを正しく伝えていくことも、薬剤師の役割だと思っていますょ

さて、
前回の大麻に引き続き、医薬品シリーズ

今回は、違法ドラッグ。

オーストラリアでは約10%がドラッグユーザーだという統計があります。(2016年統計)
結構多い!とこの数字を見るとショックを受ける方もいるかと思いますが、多分世界を見渡せば、もっと多い国もあるでしょう。(もちろん、違法です
日本ではあまり公にされない分、あまり気にしたこともないという方が多いかもしれませんね。

だからこそ怖いもの見たさで(?)ちょっと知りたい方のための記事です。

コカイン Cocaine
コカインは刺激薬ですので、心身をハイにします。心拍は上昇、アドレナリンは出まくるわ、体温も上がるし、食べなくても平気。それが長期にわたると、もちろん体は疲弊します。動き続けた心臓は疲れて心疾患、不眠症、ホルモンがバランスを崩すので不安になったり様々な弊害が出てきます。体を酸化させ、エネルギーの生産工場であるミトコンドリアが機能しなくなり、臓器に様々なダメージを引き起こします。鼻から吸入することで、鼻血や鼻水が出たり、においや味が分からなくなったり、声がかれたりします。

エクスタシー Ecstasy
エクスタシーとは、本来、MDMAやそれに似た成分を含むドラッグの総称です。ですが、物によってはMDMAが少ししか含まれていなかったり、全く含まれずに、アンフェタミンやPMA(para-methocyamfetamine)、ケタミン、NBOMe、methyloneや家庭用クリーニング剤に含まれる成分などが代わりに含まれている場合があるようです。入っている刺激剤によって、心拍と体温が上昇。これを使う人は、幸福感や高揚感、頭のスッキリ感を求めるそうですが、これはセロトニンによるものです。
MDMAも活性酸素で体をサビさせ、特にセロトニン神経系にダメージを与えると言われています。なので情緒不安定などの症状が出るのも、このセロトニンによる可能性があります。


ヘビーユーザーがちょっとのストレスでも耐えられずにキレやすかったり、鬱っぽくなったりするのは、コルチゾールの過剰分泌による作用もあると思います。

アンフェタミン
アンフェタミンが『Speed』、メタアンフェタミンのクリスタルを『Ice』と呼ばれています。Speedというネーミングからも、これらが刺激薬であることがわかります。

ドラッグを使用して、突然死になり得るのも、体が危険状態(ハイの状態)が長くつづくことで心臓をはじめとする臓器がついて行けず、不整脈や心筋梗塞、脳卒中となってしまうのですね。

現在、世界中で研究されている『大麻 Cannabis』。

その理由は、大麻に含まれている成分が何百種類もあり、それぞれ性質も違い、部位によっては用途も異なるという非常に面白いキャラクターを持っているからなのです。

大麻には、100種類以上のフィトカンナビノイド成分に加えて、400種類以上の有機化合物(テルペン、フラボノイド等)が含まれています。

フィトカンナビノイド成分のうち、最も有名なのが『THC』。大麻による精神への影響は、ほとんどこのTHCによる影響で、違法ドラッグとして世界中で使用されている成分です。大麻は『吸う』のですが、実は加熱をすることで構造内の-COOHが取れ、THCA(前駆体)からTHC(活性型)になり作用を示すからなのですね。

しかし、加熱をすることで約30%のTHCが分解されてしまいます。大麻の成分って、おそらく非常に分解されやすいのでしょう。だから、構造にちょっとの違いが表れ、結果、何百種もの異なった構造を持った成分が検出されるのだと思います。なので加熱すると、活性型として体に吸収されるのは37%までしかないと言われていますが、吸収スピードは早く、1-2分以内に体から大麻が検出されるほどだそうです。THCは脂溶性が非常に高いので、脂肪細胞や脾臓に蓄積されます。

THCは、CB1受容体とCB2受容体の部分刺激薬。CB1受容体は、中枢&末梢神経、特に痛覚神経系に広く分布しています。CB2受容体はミクログリアや細胞上に存在しており、炎症に関与しているようです。

THCがCB1受容体を刺激することで、アデニル酸シクラーゼが不活性化し、cAMPが下がることで向精神作用を表します。
キャナビスは基本的にdepressantですので、体の動きをスローにします。そして、妄想を引き起こすことでも知られていますが、これらの作用はこのTHCによる作用なのです。

フィトカンナビノイド成分のうち、次に有名なのが『CBD』。CBDはCB1受容体に対して、ネガティブ・アロステリックモジュレーターとして作用し、CB2受容体に対しては弱ブロッカーとして作用します。さらにCBDはCB1受容体、CB2受容体以外にも、他の受容体にも作用すると言われています。
なので精神作用よりも、免疫系のモジュレーター作用や、抗炎症作用を発揮すると言われています。


大麻は違法ドラッグですが、厳密な管理下で栽培・収穫・検査・製造された場合は『医療用マリファナ』にカテゴリーされます。植物なので、THCやCBDの含有量や純度が一定でなかったり、肥料や農薬、重金属などの影響を受けて育っているものは、医療用として認められないのです。医療用として使用するためには、これらの厳しい試験に合格しなければなりません。この基準は結構厳しく、医療用として認められるためには大変はプロセスを経なければいけないのです。

現在、オーストラリアではTHCがS8(Drug of dependance)、CBDがS4(医師による処方箋で処方できるカテゴリー)、CBDのうち含有量が60mg以下のものがS3(薬剤師の権限で処方できるカテゴリー)に分類されています。

処方できるのは、
・抗がん剤による吐き気
・てんかん
・MS
・終末期
・癌以外の慢性痛

です。

パーキンソンやアルツハイマーなどの他の疾患についての効果はまだ確立されていませんし、精神性の副作用のために、慢性痛に関してはコデイン系の鎮痛剤の方が安全だという意見もあります。

まだまだ、研究段階。
だからこそ、ドクターも賛成・反対派に分かれるし、保険適応にならないので患者さんの金銭面での負担も大きいです。

(この記事に書いているTHC,CBDの他に、様々な成分が大麻には存在していますが、それらの作用についてはまだ研究段階です。)

オーストラリアではSativexというブランド名の医療用キャナビスがあります。一般名はnabiximols。THCとCBDが1:1の割合で含まれており、興味深いことに両方の作用によってTHCの精神作用が抑えられています。

冒頭に
大麻には、100種類以上のフィトカンナビノイド成分に加えて、400種類以上の有機化合物(テルペン、フラボノイド等)が含まれています。

と書きましたが、1つ1つの成分の性質を明らかにするだけでなく、THCとCBDの混合のように、それぞれの成分を合わせた時に作用がどう変化するか?を追求していく必要があります。

さらには、フィトカンナビノイド成分内での組み合わせだけでなく、フィトカンナビノイドと有機化合物(400種類以上!)との相互作用も考えて行く必要もあります。

だからこそ、世界中で多くの研究がされているのですね。



2020年、7カ月のロックダウン中に仕込んだ『ヘンプ味噌』



仕込みから6か月経った現在、こんな感じになっています↓
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色は茶色っぽくなっていて、良い感じ

あと最低でも半年近くは待たないといけないので、楽しみに待つことにします。

さて今日は、ヘンプにちなんで『医療用キャナビス(大麻)』のお話です。

2021年1月以降、薬局でも❝医療用キャナビス❞の処方箋をチラホラ受け取るようになりました。患者さんからの問い合わせも何件かありましたし、ドクターやサプライヤーとも何回かやり取りしました。

マリファナっていっても、実際に見たこと無いので・・・

だから、医療用キャナビス製品を手に取ると(調剤しないといけないので、ボトルの外しかみたことありませんが)、『おー、これが医療用キャナビスかぁ!!と少し興奮しますが、結局のところ私が服用するわけじゃないので味とか実際の効果等わからないんですよね。

ドラッグとかこういう話は、日本だとタブーですよね・・・
でも薬は薬。
私達の専門です。

だからこそ、ちょっと覗いてみたくなりませんか?
ちょっとよくわからないけど、話しづらいけど、本当は『もっと知りたい!』って思う薬剤師さん、いるんじゃないかな?

私が学んできた知識の範囲内で、このブログに書いていこうと思います。



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